鹿児島県民教育文化研究所

鹿児島市の旧城下町で「上町 (かんまち)」と俗称される景観重点地区で、鶴丸城築城以前の本城 「内城(うちじょう)」(現大竜小学校) に隣接する敷地(旧富島津家上屋敷跡) に立地する。 鹿児島市で雑貨卸商を営んだ豪商、藤武助氏が昭和14年に完成させた自邸である。 設計施工は旧之上建設 (之上貴助)、 建設費2万円と伝える。 昭和22-23 年頃から旅館割烹「春日園」として近隣に親しまれ、結婚式などにも使われたが、昭和 35 年5月県教育会館維持財団が購入、「教育会館春日寮」として離島教職員の子弟の学生寮に供され、現在は「県民教育文化研究所」として運営されている。
特 徴
戦前の豊かな財力を背景に、由緒ある地に建てられた木造一部2階建ての近代和風邸宅建築である。本館と付属図書館棟からなる。
本館1階は、和風玄関と洋風玄関 (南玄関) から続く応接間 (現事務室)、それぞれ2室で構成される2つの続き間座敷とこれも2室で構成される趣味性あふれる数寄屋風座敷からなる。
応接間 (事務) は主玄関と洋風玄関から導かれる。 主玄関は玉石洗出し土間に沓脱石を据え、厚板を切目に貼った式台を踏み、上がり框をまたいで畳敷玄関の間に上がる。奥の襖を開くと床の洋風ホールに入り、左手の応接室に導く。ここは暖炉を備えた本格洋間でとなっている。
最も大きな座敷は前室と合わせて 22.5畳の大広間(大会議室) となり、一間半の角床柱、畳床の本床構えで床框は黒檀、 三幅対の掛軸が可能な無双四分一を備えた本格的しつらえである。
1階の最も奥には趣味性の強い和室があり、和室2室と椅子生活を持ち込んだ広縁で構成される。和室境の欄間には大きく波があしらわれている。
2階への階段は、手摺に自然の曲木を用い、更に野趣あふれる表現となる。 階段室周りは 丸太、小径木の格子、なぐり仕上の木部、網代天井など奔放な数寄量趣味を盛り込んだ。 部屋は東西に別れ、東は数寄屋趣味の座敷で西は曲木と竹を使った趣向が施されている。

2階
1階
経 緯
1937年(昭和12年) 着工
1939年(昭和14年) 竣工
1947年(昭和22年) 割烹「春日園」として営業
1960年(昭和35年) 鹿児島県教育会館維持財団の所有となる
1981年(昭和56年) 鹿児島県民教育文化研究所と改名
2010年(平成22年) 2月3日 石塀が鹿児島市景観重要建造物に指定
2014年(平成26年) 建物が国の有形文化財に登録

鹿児島県民教育文化研究所
所在地:鹿児島市春日町4番60号
施 主:藤武呉服店 藤武喜助
構 造:本館 木造2階建て
石倉 石造平屋
面 積:1階568.89㎡
2階103.45㎡
建設費:2万円
所有者:鹿児島県教育会館維持財団
2014年本館建物が国の有形文化財に登録